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名古屋高等裁判所 昭和60年(く)39号 決定 1985年8月16日

少年 Y・Y(昭42.1・7生)

主文

原決定を取り消す。

本件を名古屋家庭裁判所に差し戻す。

理由

本件抗告の趣旨および理由は、本決定末尾添付の抗告申立書に記載されているとおりであるが、その要旨は、少年を中等少年院に送致した原決定の処分は著しく重きに過ぎて不当であるから取り消されるべきである、というのである。

職権をもつて、本件抗告事件記録を調査して検討するに、医師○○○作成の死亡診断書、名古屋市○区長作成の筆頭者Y・Nの戸籍謄本、瀬戸少年院長作成の「抗告中の在院者の死亡について(通知)」と題する書面によると、少年は、本件抗告申立後の昭和60年7月26日午後零時50分ころ、愛知県瀬戸市○○町××番地所在の「公立○○病院」において、死亡したことが明らかである。

そうとすると、原家庭裁判所の少年に対する審判権は、少年の死亡により消滅し、従つて、現時点では、名古屋家庭裁判所が昭和60年7月22日になした少年を中等少年院に送致する旨の決定は、もはやこれを維持することができなくなつたものと解するのが相当であるので、少年主張の点について判断するまでもなく、右原決定は取り消しを免れない。

よつて、本件抗告は右の事由があるので,少年法33条2項前段、少年審判規則50条に則り、原決定を取り消して、本件を名古屋家庭裁判所に差し戻すこととし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 杉田寛 裁判官 石川哲男 川原誠)

〔参照〕受差戻し審(名古屋家 昭60(少)4896号 昭60.9.18決定)

主文

昭和60年少第3481号建造物侵入、窃盗保護事件につき当裁判所が同年7月8日付をもつてなした審判開始決定を取り消す。

昭和60年少第3481号建造物侵入、窃盗保護事件及び同年少第3483号窃盗保護事件の審判をいずれも開始しない。

理由

当裁判所は、昭和60年7月1日付をもつて上記少年に関する昭和60年少第3481号建造物侵入、窃盗保護事件(以下「第3481号事件」という。)及び同年少第3483号窃盗保護事件(以下「第3483号事件」という。)をいずれも受理し、同月8日付をもつて第3481号事件につき審判の開始を決定した。しかしながら、本件記録によると、少年は同日26日に死亡したことが認められ、家庭裁判所の少年に対する審判権は少年の死亡によつて消滅したものと解される。

よつて、第3481号事件に関する前記審判開始決定を取り消したうえ、第3481号事件及び第3483号事件につきいずれも審判を開始しないことを決定する。

(裁判官 古賀輝郎)

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